中学受験で苦戦しやすい単元のひとつである浮力。私が教えていた塾でもつまずく子供は何人もいました。この記事では、浮力がわからない子供に向けて、基礎の基礎からわかりやすく解説していきます。
- そもそも浮力ってなに?
- 浮力と押しのけた水の重さ。アルキメデスの原理を知ろう
- 浮力と水圧の関係性。水圧は水の深さ比例
- 浮力を解く際に重要な3つの力
- 水の重さと水の体積は等しい
- 浮力があっても沈む場合も。水に浮く物体と沈む物体の違い
- 食塩水は水よりも浮力が大きい。海水で体が浮きやすいわけ
- 直方体を沈めたときの浮力を考えよう
- ばねばかりと浮力の問題を考えてみよう
- 浮力の大きさを求めるときは矢印を書いてみよう
そもそも浮力ってなに?
浮力は「ふりょく」と読みます。
たとえば、お風呂の中にプラスチック製の軽いボールを持ち込んで沈めようとしても、上手くいかないですよね?
プラスチックボールだと水に押し返されてしまい、水面にプカプカ浮かんでしまいます。でも、私たちの体は、ふつうに入浴しただけではプカプカ浮かぶことはありません。
プラスチックのボールは浮かぶのに、人間の体は沈む。
どうしてそういう違いが起きるのでしょうか?
以前、同様の質問を塾で生徒にしたときには、「人間の体が重いから」と答える子が多かったです。
間違いではありません。しかし、それだけの解答ではテストではマルがもらえません。
ここで問われるのが「浮力」です。
プラスチックボールを水の中に突っ込むということはすなわち、プラスチックボールで水を押しのけることです。
無理やり押しのけられた水は元に戻ろうとします。
水の中にプラスチックの軽いボールを無理やり沈めようとしてみると、水がググッと抵抗して押し上げようとしてきますよね。
水の押し上げてくる力より大きな力をかければ沈みますし、力が足りなければ浮いてしまいます。
この水が押し上げてくる力が浮力です。より正確には、流体(この場合は水)に入れた物体に作用する重力とは、反対方向に作用している力です。こう書くとちょっと難しいですね。あとでくわしく説明します。
浮力と押しのけた水の重さ。アルキメデスの原理を知ろう
まずは以下の点を押さえておきましょう。
そのため浮力=押しのけた液体の重さです。
これをアルキメデスの原理といいます。
アルキメデスの 原理は水以外の液体でも用いることができます。
浮力と水圧の関係性。水圧は水の深さ比例
次に考えたいのがモノをすっぽりと沈めたときの浮力についてです。
四角い箱を水の中に沈めたとしましょう。
水圧ってなにか知っていますか? 水の中にある物体には圧力が働きます。なぜなら、水にも重さがあるからです。
圧力とは1㎠あたりにかかる力ですね。水圧とは、水の重さによる圧力です。
水圧は水の深さに比例して大きくなります。
水の場合は、水深1cmなら1g/㎠、水深5cmなら5g/㎠です。
先ほどの図を見てもらうとわかるように、上からも下から右からも左からも水圧がかかっています。
水圧はあらゆる方向からかかるのです。ただし、左右の水圧は見てのとおり等しく左右からかかるため、相殺されます。
しかし、上下の水圧は違うのです。左右からかかる水圧のように等しくはありません。
「下面にかかる水圧×底面積」(上向きの矢印の力)から「上面にかかる水圧×上面の面積」(下向きの矢印の力)を引きます。
すると、浮力が算出されるというわけです。
浮力を解く際に重要な3つの力
浮力の問題が出題された際に押さえておきたいポイントがあります。
それは以下の三つです。
モノの重さ
モノが押しのけた液体の重さ(浮力)
ばねばかりが示す重さ
水の重さと水の体積は等しい
下図を見てください。
先ほど浮力を解く際に重要な3つの力を挙げました。
浮力は「モノが押しのけた液体の重さ」でしたね。
上の図には浮力が80gで、体積が80㎤とあります。
つまりこの図では「浮力=押しのけた水の体積」です。「あれ? 水の重さじゃなくて体積なの?」と思うかもしれません。
実は水の場合は「重さ=体積」です。水1gの体積は水1㎤なのです。
そのため
「浮力=押しのけた水の体積=押しのけた水の重さ」
が成立します。
水以外の液体の場合、体積と重さは一致しないので気をつけてください。
浮力があっても沈む場合も。水に浮く物体と沈む物体の違い
続いて下図を見てください。オレンジ色の球体は半分だけ水に沈んで浮いている状態とします。
水に浮くか沈むかは物体の密度によって決まります。
たとえば、上図の球体の体積を80㎤とすると、浮力は「押しのけた水の体積」
であるため、全て水につかっている状態なら、密度に関わらず80gです。
しかし、オレンジ色の球体は半分だけ沈んでいるので、
「押しのけた水の体積」は40㎤であり、浮力は40gとなります。
重さは以下のとおりです。
水に浮いている球体…1㎤あたり0.5gのため、0.5g/㎤×80㎤=40g 重さ40g 浮力40g
水の中で止まっている球体…1㎤あたり1gのため、1g/㎤×80㎤=80g 重さ80g 浮力80g
水の底に沈んでいる球体…1㎤あたり3gのため、3g/㎤×80㎤=240g 重さ240g 浮力80g
つまり、浮力と重さが釣り合うと水に浮き、浮力と重さが釣り合いなおかつ密度が1g/㎤だと水の中で止まります。
浮力より重さが勝ると沈みます。
食塩水は水よりも浮力が大きい。海水で体が浮きやすいわけ
では、次に水以外の液体だとどうなるかを考えましょう。
海の中に入ると、プールよりも簡単に体が浮きますね。つまり、浮力が大きいのです。
なぜ海の浮力は大きいのでしょうか。
それは、海水が塩水だからです。
塩水は普通の水よりも塩が溶けている分、液体の密度が高いですね。
液体の密度が高いとなぜ浮力が大きくなるかといえば、浮力は「押しのけた液体の重さ」だからです。
たとえば100㎤の物体を水と食塩水にそれぞれ沈めるとします。
水の密度は1g/㎤ですから、浮力は1g/㎤×100㎤=100gです。
食塩水の密度は濃度によりますが、仮に1.2g/㎤とすると浮力は1.2g/㎤×100㎤=120gです。
つまり、水と食塩水ではおしのけた液体の体積が同じでも、水より食塩水の場合のほうが重さは大きくなるのです。
そのため、「おしのけた液体の重さ」と等しい浮力は、水よりも食塩水のほうが大きくなります。海で体が浮きやすいのもそのためだったのです。
直方体を沈めたときの浮力を考えよう
ここまでの知識を活用して、「沈んでいる部分の体積から浮力を求める問題」がよく出題されます。下図を見てください。
上記の立体図形を水に沈めます。
すると、10cm分だけ沈んだ状態で浮かびました。浮力はいくつでしょう?
浮力は「押しのけた液体の重さ」でしたね。
まず、沈んでいる立体図形の体積を求める必要があります。
底面積10㎠×沈んでいる高さ10cm=100㎤です。
沈んでいる体積分だけ水を押しのけています。
水は1㎤あたり1gなので、押しのけられた水の重さも、体積と同様100gになりますね。
押しのけられた水の重さは浮力と等しいため、浮力は100gです。
ばねばかりと浮力の問題を考えてみよう
続いて、ばねばかりの問題です。
なお、このときばねばかりのばねは800gの力でおもりを引き上げているともいえます。つまりこういうことです。
「おもりの力はわかるけど、ばねばかりが引き上げる力って?」と思う人もいることでしょう。こう考えてみてください。ばねばかりがおもりの重さと同じだけの力で、上におもりを引っ張らなければ落ちてしまいますよね。
ちなみに、この物体を引っ張る力を張力といいます。
上図のボールを水に入れてみましょう。
重さ800gの力に対して、浮力200gの力が働いたとします。
ここで問題となるのがばねで引き上げる力です。
800gの重さを、浮力とばねで引き上げる力(張力)でつりあわせなければいけないわけですから、800=200+🔲です。🔲=600ですね。
浮力の大きさを求めるときは矢印を書いてみよう
浮力の問題は考えているうちに、どちら向きの力どこにかかっているのかがわからなくなりがちです。そうならないよう、図に矢印を書き入れながら整理してみましょう。
矢印の向きさえ間違わなければ、きっと正解を導き出せます。
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