中学受験では、学年が上がるごとにスケジュールが過密になります。
子供は学校と塾と自習室だけで一日を終える生活。親は、塾への送迎に始まり、学習スケジュールの管理、宿題のチェック、弁当作り、と息つく暇もありません。
しかし、忙しい状況が長期化すると、親子間でストレスや行き違いが生まれます。この記事では元塾講師の目線で、中学受験をめぐる親子の3つの不足とその解消法について紹介します。
受験期の親子の「不足」がトラブルに発展
受験前の忙しさからくる親子の「不足」にはどんなものがあるでしょうか。以下、紹介します。
受験勉強による睡眠不足から親子間の衝突が
受験当日が近づくにつれ、睡眠時間を満足にとれない受験生が増えてきます。眠れないのは受験生ばかりではなく、多くの親も同様です。
「子供がかわいそうだから」「最後の追い込みだから」と、子供の就寝まで付き合う親は少なくありません。しかし、どんなに夜更かししても、家事や仕事の準備のために、大半の親は子供より先に起床するはめに。睡眠を削り過ぎて、朝起きた瞬間から疲れを感じる親も少なくないでしょう。
親も寝不足、子供も寝不足で、互いにイライラしていると、ちょっとしたことで親子の衝突を繰り返しがちです。おまけに疲労は蓄積していきますから、精神面にも、勉強の効率の面にも悪影響が出てきます。
受験勉強はハード。息抜き不足から「受験をやめたい」
受験生は勉強に追われて、息抜きをする時間がなかなかとれません。おまけに、皆が迫りくる受験を前に頑張るため、以前より成績が上がりづらくなります。
「頑張っている、なのに成果が出ない」という状況が続くと、だんだん子供もやる気をなくしてしまうもの。実際、「受験期だからこそモチベーションが落ちてしまう」話はよく聞きます。そうした子供は率直に「もういやだ。受験をやめたい」と言い出すか、受験間際になって我に返り「どうしよう……」と青ざめるかのどちらかです。
(受験をやめたいと言い出した場合や、休塾したいと言い出した場合の記事はそれぞれ以下のとおりです)
【中学受験をやめたい!】やめるかどうかの決断。子供のやる気がなくなってしまったら
休塾理由正直に伝える? 「塾を休みたい」と子供が言い出したら
一方、やる気のない子供を前に親の焦りは募り、つい強い言葉で叱咤。それで奮起してくれればよいですが、残念ながらたいていの子供は逆にやる気を失ってしまいます。
受験前のコミュニケーション不足から、志望校選びで衝突
塾で過ごす時間が長くなれば、家族間のコミュニケーションはどうしても不足します。コミュニケーション不足で、一番問題になるのは志望校選びです。中学受験の難しいところは、なんといっても子供がまだ小学生であるということ。親がリードしないと中学受験はなかなか軌道に乗りません。
そのため、責任感の強い親ほど、つい重要事項の決定をひとり先行して進め過ぎてしまいます。志望校の決定もその最たるものです。
あとになって、「あの学校に行きたいわけじゃないのに」と子供が言い出し、直前にもめるケースはたびたびあります。
目の前の学習サイクルをこなすだけで精一杯なのは、親も子も一緒ですが、大事な話題まで後回しにしないように気をつけたいところです。
親子の「不足」を解決し、トラブルを防ごう
親子に「不足」があった場合、どうすればよいのでしょうか。以下、紹介します。
親子ともに睡眠不足を解消。受験間近でも睡眠は必須
子供は早いうちに、「朝型と夜型のどちらが自分に合うか」を試しておいたほうがよいです。塾講師時代、夜型生活をする子供たちに、「疲れて居眠りしてしまう。どうしたらよいか」とよく相談されました。その場合、「一度、朝型を試してみて」と伝えたものです。向き不向きがありますが、睡眠を挟むとだいぶ集中力が回復します。
朝型にせよ夜型にせよ、睡眠時間は下手に削らないようにしてください。ダラダラ勉強するぐらいなら睡眠時間を長くとって、短い時間集中しましょう。
なお、受験生の睡眠についての記事はこちらです。
受験生にとってベストな寝る時間って何時? 睡眠時間を考える
疲れたら親が子供より先に眠っても大丈夫です。一生懸命な親は「子供より先に眠ったらかわいそう」と思い詰めがちですが、だからといって自分の健康を疎かにするのはおすすめできません。その日の体調や気分で臨機応変に判断するようにしましょう。
受験前に親が体調を崩せば子供にも影響があるかもしれませんし、少しでも「まずい」と感じたら戦略的判断と割り切って眠ってしまってください。
どうしても睡眠時間を増やせないなら、せめて自分に合った睡眠をとれるようにしてください。
家にいても、家事に追われてなかなかタイミングを見つけるのが難しいかもしれませんが、仮眠をとる時間を作るとよいでしょう。よく「20分がちょうどよい」といいますが、人によって差があります。自分に合う時間とタイミングを見つけてください。
仕事がある場合は、せめて家事をなるべく手抜きできるようにしてください。食洗機やロボット掃除機、乾燥機付き洗濯機の導入をし、食事も宅配サービスや出来合いのものにするなどし、少しでも休める時間を確保しましょう。
息抜き不足解消。たまには遊ぶ日を設けて
塾の大きなテストを終えたタイミングで息抜きの日を作ると、子供の勉強サイクルにもメリハリが出ます。たとえば、塾で成績のよい子供はテストが終わると一日遊びに行って、次の日からまた集中というパターンが多かったです。
私が集団・個別ともに見ていたある生徒の息抜きは毎回日帰り旅行で、だいたい温泉など親子ともにリラックスできる場所を選んでいました。「親子ともに楽しめてよい選択だなあ」と思ったのを覚えています。
子供に合わせすぎて、行きたくない場所にばかり付き合い、親がストレスをためてしまっては大変です。子供と話し合ってバランスをとってください。もっとも、この記事を書いているのはコロナによる緊急事態宣言中ですので、現状ではそもそも外出自体難しいですね……。
なお、外出自体ストレスになるケースもあります。勉強への焦りが強い子供だったりインドア派の子供だったりすると、外出ではストレス発散できません。もっと勉強することで安心できる子供もいますし、読書やゲームがストレス発散になる子供もいるでしょう。子供のタイプに合わせて決めてください。いずれにせよ、親もひとりになって休む時間をとりましょう。
コミュニケーション不足解消。「子供の話を聞く」スタンスの重要性
塾の行き帰りに、できるだけ意識的に話をするようにしましょう。その際、「子供の話を聞く」姿勢が大切です。ささやかなことに思えるかもしれませんが、意外とこれができていない家庭は多くあります。
受験が近づくとつい「今日の宿題は?」「何時までかかりそう?」などと事務的な話に終始してしまいがち。子供が今なにを考えているかが後回しになってしまいます。そのため、コミュニケーションをとっているつもりでコミュニケーションがとれておらず、トラブルに発展しやすいのです。塾であったこと、最近感じていることなど、子供の抱える問題を共有するようにしましょう。
加えて、塾から子供の話を聞くことも大切です。塾ではどんな様子か、子供を待っている間に、聞けるスタッフがいれば聞いておきましょう。その際、心配事があれば伝えておいてください。塾も意識的に子供を見てくれるようになり、何かあれば声をかけてくれるはずです。
受験は親子ともに元気でいることが大切
面倒見のよい中学受験専門塾に通わせていたり、家庭の分までフォローしてくれる家庭教師を頼んでいたりする場合は別ですが、中学受験には親のサポートが欠かせないのが現状です。
受験を乗り切るには親子の二人三脚が上手くいくかがカギとなります。
親子ともに全力で受験に臨めるよう、早いうちに「睡眠不足」「息抜き不足」「コミュニケーション不足」を解消しましょう。
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