国語力(想像力、読解力、語彙力、表現力、文章力など)を伸ばすのは難しいものです。この記事では、小学生の国語力アップに有効な「創作あそび」について紹介します。塾講師時代に試したものです。家庭でもできますので参考にしてみてください。
物語をつくってみよう
子供の多くは作文が嫌いです。授業において、塾長の指示で物語の要約文をよく書かせていたのですが、イヤな顔をする生徒が圧倒的多数でした。面倒くさい、どこが重要なのかわからない、まとめたところで国語力が上がるとも思えない、と評価はさんざん。このままでは文章を書くこと自体が嫌いになってしまいかねません。
そのため、季節講習のとき余った時間を利用して、創作の時間を設けました。
子供の書く文章に見られがちな問題点とは
創作をする前に、まず「自分の一日」について作文を書いてもらいました。
時系列順に書くというシンプルな構成で、誰にでも取り組みやすい分、文章に見られる問題点もはっきりします。
子供の書く文章に見られがちな問題点として、代表的なものは以下のとおりです。
パターン1 箇条書き
私は朝起きました。
ご飯を食べたあと、塾に来ました。
午前中勉強をしました。
昼ご飯を食べて、午後の授業を受けました。
自習室で勉強をし、終わってから家に帰りました。
夕ご飯を食べて寝ました。
パターン2 一文が長い
私は朝起きてご飯を食べたあと、塾に来て、午前中勉強して、昼ご飯を食べて午後の授業を受けて、自習室で勉強をし、終わってから家に帰宅し、夕ご飯を食べて寝ました。
パターン3 敬体と常体が混在
私は朝起きてご飯を食べたあと、塾に来た。
午前中、勉強をしました。
昼ご飯を食べて、午前の授業を受けた。
自習室で勉強をし、終わってから家に帰り、夕ご飯を食べて寝ました。
パターン3の「敬体と常体の混在」は意識すればすぐ直せます。しかし、パターン1「箇条書き」、パターン2「一文が長い」といった問題点は、塾講師が口頭で指導したところで、なかなか直るものではありません。
問題点を克服し、文章を上達させようと思ったら、読書量を増やしプロの書き手のテクニックに学ぶことが必要です。
「あなたの文章には、パターン1あるいはパターン2の問題点があるから注意してみて」ということだけ、簡単に伝えておきましょう。本人が読書の際に、文体に注意をはらうきっかけになります。
自分なりの創作。まず書くことから始めよう
上手な文章を書くためには、どうすればよいのでしょうか。そのカギは創作にあります。
「創作あそび」のテーマを決める
授業では以下のようなやりとりをしました。
筆者「さっき書いてもらった作文、舞台は塾と家だけだったね」
生徒「だって毎日勉強ばっかりだもん。行けるものなら遊園地に行きたい」
筆者「じゃあ、次の作文では遊園地に行く話を書こうよ」
生徒「そんなの嘘じゃん。でたらめを書くの?」
筆者「これから書く作文は創作だから、でたらめでいいんだよ。主人公は自分だと照れが入るだろうから、動物やキャラクターにしようか」
生徒「えー、じゃあドラえもん(笑)」
筆者「では『ドラえもん、遊園地に行く』をテーマに物語をつくってください」
生徒たちは頭を抱えたり、文句を言ったり、げらげら笑ったりしながら、創作に取りかかります。要約文を課されたときよりも、教室の雰囲気ははるかに明るいです。
こうした作文を実施するときのコツは、悪ふざけできる面白い要素を取り入れること。生徒たちもはりきってコミカルな作文を仕上げてきてくれます。
創作意欲を引き出すためにも、感想タイムは長くとろう
提出された作文は、子供たちの独創的なアイデアがこれでもかと盛り込まれていました。
・ドラえもんとケンカしたのび太が傷心の自分を慰めようと、おひとりさまで遊園地を満喫する話(先生、「主人公はドラえもん」って言いましたよね)
・興味本位でジェットコースターに乗ったドラえもん。ところが故障のため止まらなくなりなんの罰か1,000回転。ドラえもん自身も故障しかけたという話。ラストの台詞は「とほほ、しっぱい、しっぱい。じかいは、気をつけよう」(余韻がすごい)
・遊園地自体そもそも存在していなかった話(てつがく)
一例を挙げるとこんな感じで、ドラマティックに話が展開するものばかりでした。
(かなり昔のこととはいえ、生徒のプライバシーもあるので、少し変更しています。おおまかなところで理解していただければ)
文体自体はこなれていませんが、どれも読んでいて手放しで面白かったです。読み上げながら目を白黒させる塾講師を見て、書き手の生徒は「してやったり」という顔つき。他の生徒たちの笑い声にも、まんざらではない反応を見せます。
自分たちの想像力をもって表現したものを、皆で共有し楽しめるというのは、創作の喜びの普遍的な部分でしょう。
ですから、家庭で「創作あそび」をするときは、この「感想タイム」に重きを置いてみてください。感想を伝えることで、子供の「書くことは楽しい」という気持ちを育てることをおすすめします。
改善点を指摘しよう
家庭で本格的な添削は難しいものです。ですから、基本的な漢字の間違いや不自然な文章などを、わかる範囲で指摘してあげてください。
大切なのは添削の精度ではなく、子供が本を読むときに「自分も次に書くときに、こんな風に書いてみよう」と考えるようになることです。そのためにも「創作あそび」は定期的に実施してみてください。
文章を書くことで読み方もまた変わっていく
「創作あそび」は、敬遠されがちな作文を楽しくこなすためのアイデアです。生徒たちからも「次もまたやりたい」という声が多く出ました。
書くことに積極的になれると、読むときの目線も変わってきて、読書量が文章力につながりやすくなります。ぜひ、家庭でも試してみてください。
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