「比喩」と聞くと、「なんだか難しそう」と感じるかもしれません。しかし、私たちは日常的に比喩を使いこなしているのです。
この記事では、元塾講師の目線で比喩の意味や効果、使い方について紹介していきます。
- 比喩(比喩法)とはどういう意味? 読み方は?
- よく言う「比喩的」の意味って? 比喩的な表現とは
- 比喩には種類がある? それぞれの使い方・見分け方を覚えよう
- 隠喩ってなに? 読み方・使い方・具体例を紹介
- 擬人法ってなに? 読み方と使い方
- 比喩にはどんな効果が期待できるの?
- 比喩を使ってはいけないときがある!
- 比喩の意味は前後の文脈から判断しよう!
- 比喩を理解することでたしかな国語力を
比喩(比喩法)とはどういう意味? 読み方は?
比喩は「ひゆ」と読みます。「なにか」を説明するときに「別のもの」にたとえて説明することはありませんか。
一例をあげると、「氷のように冷たい態度」「花のような笑顔」といった具合です。
「なにかを説明したり表現したりするときに、他のものにたとえること」が比喩であり、私たちは意識せず、日常的に比喩を使っています。
よく言う「比喩的」の意味って? 比喩的な表現とは
よく「この文章は比喩的だね」「このシーンは比喩的だね」という言い方をします。「比喩的」、つまり「比喩っぽい」とはどういうことでしょうか。
たとえば、ある映画に「雨が降っている」場面が出てきたとします。
情景描写が登場人物の心情を表していることはよくあることです。
もし、一緒に映画を観ていた友達が、「この『雨』はなんだか比喩的だね~」と言った場合、「雨が登場人物の泣きたい気持ちや悲しみを表現しているんだね~」と言いたいのかもしれません。
比喩には種類がある? それぞれの使い方・見分け方を覚えよう
比喩には以下のような種類があります。それぞれの分類と使い方・見分け方を覚えましょう。
直喩ってなに? 読み方・使い方・具体例を紹介
直喩は「ちょくゆ」と読みます。たとえば
「Aちゃんはアイドルみたいだね!」
「Aちゃんはアイドルのようだね」
「Aちゃんはまるでアイドルだね」
上記の表現はどれも「直喩」です。
「みたいに」「ようだ」「まるで」という言葉を使って「君」を「アイドル」にたとえているのです。
直喩のほかの具体例としては
「山みたいに大きい」
「宝石のようにキラキラしている」
「まるで先生のような口ぶりだ」
などが挙げられるでしょう。
「みたいに」「ようだ」「まるで」が出てきたら「直喩」です。
隠喩ってなに? 読み方・使い方・具体例を紹介
隠喩は「いんゆ」と読みます。たとえば
「君はアイドルだ」
アイドルではないAちゃんのことをこう表現したとします。
話し手にとって「Aちゃん」は「アイドルみたいな存在」であると表現しているのです。
このように「みたいだ」「ようだ」「まるで」などを使わないで、なにかほかのものにたとえる表現方法を隠喩といいます。
隠喩のほかの具体例としては
「君の存在は道しるべだ」
「あの教師は悪魔だ」
などもそうですね。
なにか別のものを意味しているのだけれど、はっきりと比喩であることを示さない表現が隠喩なのです。
隠喩は別名、暗喩とも言います。「隠」れる「暗」いという字義からも、「はっきり比喩だと示さない表現」であるということが理解できるでしょう。
隠喩・暗喩はメタファーともいいます。メタファーは説明文で頻出する言葉なので、押さえておきましょう。
擬人法ってなに? 読み方と使い方
擬人法は「ぎじんほう」と読みます。「擬」の字は似せる、真似ることを意味するものです。つまり擬人法とは人を真似る表現であるといえます。
「月が水の中で踊る」
このように、水面にうつる月を表現したとしましょう。当然ながら、月は本当に踊っているわけではありません。踊っているかのように見える、つまり揺れているのです。踊ることができるのは人間であり、月ではありません。
月を人間に見立てた表現がされているわけですから「擬人法」に該当します。
擬人法の具体例はほかにも
「葉っぱが頭を垂れていた」
「カエルが元気よく歌っていた」
「お日様がカンカンに怒っている」
などが挙げられます。
比喩にはどんな効果が期待できるの?
比喩にはどんな効果が期待できるのでしょうか。
まず、たとえを取り入れることで伝えたい内容が明確になります。
「雨だよ!」というより「殴りつけるような雨だよ」と伝えたほうが、雨足が強い状況を理解してもらいやすいでしょう。
また、表現に深みを持たせる際にも有効です。
比喩を使ってはいけないときがある!
字数がタイトな記述問題で、わざわざとってつけた表現をする必要はありません。比喩の部分は別の言葉に言い換えるようにしましょう。
たとえば
「友達の悪質ないたずらを前に、〇〇は視界がゆらぐほどの怒りを覚えた」
→「友達の悪質ないたずらに、〇〇は激怒した」
とコンパクトにまとめられます。
ただし、「記述問題において比喩は厳禁」というわけではありません。
たとえば、その比喩が文中でキーワードとして機能している場合。これはOKです。また、その比喩が設問において重要な意味を占める場合もOKでしょう。
無理に別の言葉に言い換えることで、本来の文章のニュアンスを損なってしまってはいけません。自分の言葉で書き直すときは、正確に比喩の意図するところを汲みましょう。
比喩の意味は前後の文脈から判断しよう!
たとえば、物語文において「私の体に夜の空気が満ちた」という文章があったとします。
この文章だけを読んでも、主人公が嬉しいのか悲しいのかはわかりません。
「夜」というワードから、翳りやさみしさを連想する人も多いでしょう。しかし、前後の文章で、解釈がガラリと変わってくることはよくあります。
以下の2つの文章を読み比べてみましょう。
例1
夏祭りの屋台があちこちに乱立し、おいしそうな匂いが鼻孔へと流れ込む。祭囃子や太鼓の音のなんと楽しげなことだろう。近くをよぎる子供たちの笑い声。重たかったはずの足取りが太鼓のリズムを拾っていた。私の体に夜の空気が満ちた。
例2
上司が投げつけてきた暴言を脳裏で反芻した。「それは違う、誤解だ」と毅然と反論できたならどんなによかっただろう。実際には、口をつぐんでただうなだれるより外なかった。
街灯の少ない夜道をふらふら歩いていると、自分の外と内が曖昧になってくる。さあ家まであと少しだ。けれど、最後の角を曲がる手前で歩みを止めた足は、そのままぴくりともしない。ああ。私の体に夜の空気が満ちた。
例1は「気が重かったはずの主人公が、祭の雰囲気を味わう」前向きな描写であり、例2は「辛い気持ちを反芻しているうちに一歩も動けなくなる」後ろ向きな描写です。
例1では重たかった足取りが軽くなっている描写から、主人公が祭のにぎわいに身を委ねているのがわかります。
例2では上司に暴言を投げつけられたというエピソードや、それを思い返している主人公の足が動かなくなる描写から、暗い気持ちが読み解けるでしょう。
同じ比喩でも前後の文脈によって大きく意味合いは変わります。
比喩を読み解くときには、「ほかの文章で似たような表現があったから、こっちもきっと同じ意味だ」という先入観を持ち込まず、丁寧に文章と向き合いましょう。
比喩を理解することでたしかな国語力を
比喩を読み解く力を養えれば、文章読解において大きな強みとなります。また、比喩を用いて文章を書けるようになれば、自分の気持ちをより瑞々しく落とし込むことが可能です。比喩は読み書きにおいて表現の幅をぐんと広げます。
ぜひ比喩を理解し、豊かな感性を育み、たしかな国語力を身に着けてくださいね。
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