作文が苦手だという子供はとても多いです。私が教えていた塾でも、生徒の大半は作文や記述問題が大嫌いでした。この記事では、作文が大のニガテという子供に向けて、書き方のコツを紹介していきます。
- そもそも、作文ってなに?
- 原稿用紙のルールを知ろう
- 作文において子供がやりがちなNGポイント
- 文章が上手くても構成がわかりにくいのはNG
- 課題ごとの作文の書き方
- 作文は、書き方のコツさえ身につければ楽しくなる
そもそも、作文ってなに?
「読む人に自分の言いたいことを伝えるための文章を作ること」です。
たとえば、以下の文章を読んでどう思いますか?
アメを買った。イチゴ味で10円だった。
買った場所は駄菓子屋。
お金はお母さんからもらった。
おいしかった。
なんだかわかりづらいですよね。思い付きで情報を並べているような印象です。順番を並べ替えてちょっと手を加えてみましょう。
お母さんからお金をもらって駄菓子屋に行った。
イチゴ味のアメを10円で買った。おいしかった。
だいぶわかりやすくなりました。
読む人に伝わりやすい順番で書くことが、作文においてはとても大切です。
原稿用紙のルールを知ろう
いざ書こうと思っても、原稿用紙のルールを知らないと、先生から「やり直し」と注意されてしまうかもしれません。ここでは原稿用紙の書き方を紹介します。なお、紹介するルールはあくまで一般的なものです。学校独自のルールがある場合はそれに従ってください。
①タイトルの前は2~3マス開ける。
②名前の位置は2行目の下。姓と名前の間の1マスと、名前の下の1マスは空ける。
③段落の頭は一マス空ける。
④句読点が文章の頭に来ないようにする。
⑤カッコ閉じの前ではない「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」は一マス使う。(※カッコ閉じの前にある場合は、カッコ閉じと「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」を同じマスに入れる)
⑥会話はカッコで括り、一マス目から書く。
⑦「!」「?」の後は1マス空ける。
⑧「…」「─」はそれぞれ「……」「──」と2マス分使用する。
⑨読点とカッコ閉じは一マスに入れる。
作文において子供がやりがちなNGポイント
実際、塾で教えていたときに、子供がやりがちだったNGポイントを紹介します。
次の文章にはNGポイントがたくさんあります。見つけてみてください。
昨日は母の日だったので、私はお花屋さんに行って、カーネーションを買って、それから家に帰って、お母さんに渡して、お母さんは喜びました。お母さんの笑顔を見てとても嬉しかった。だけど、歩き疲れておなかが減ってしまい、私はおやつがおいしい。
どうですか? 読んでいてなんだか気持ち悪い文章ですよね。
①句点が多すぎる
一文目を見ても明らかなように、句点(、)が多すぎます。
昨日は母の日だったので、私はお花屋さんに行って、カーネーションを買って、それから家に帰って、お母さんに渡して、お母さんは喜びました。
この文章を読みやすいように手直ししてみましょう。
OK
昨日は母の日だったので、お花屋さんに行きカーネーションを買いました。家に帰りお母さんに渡すと、喜んでくれました。
長い文章は読点(。)で区切って、読みやすいように分けましょう。句点(、)は読みやすくするために入れるものなので、かえって読みにくいようであれば減らしてしまって大丈夫です。
②敬体(です・ます)と常体(だ・である)が混ざっている
NG
昨日は母の日だったので、私はお花屋さんに行って、カーネーションを買って、それから家に帰って、お母さんに渡して、お母さんは喜びました。お母さんの笑顔を見てとても嬉しかった。
読んでみると、一文ごとの終わり方がチグハグな印象を受けませんか。これも塾生がよくやっていたミスです。
赤いところを見比べてみてください。丁寧な文体とそうではない文体を混ぜてしまっていますね。どちらの文体で書くのかは、書く前に決めておく必要があります。
OK①敬体バージョン
昨日は母の日だったので、お花屋さんに行きカーネーションを買いました。家に帰りお母さんに渡すと、喜んでくれました。お母さんの笑顔を見られて私も嬉しかったです。
こちらの文章は読みづらいところを手直しして、なおかつ丁寧な文体で統一したパターンです。
OK②常体バージョン
昨日は母の日だったので、お花屋さんに行きカーネーションを買った。家に帰りお母さんに渡すと、喜んでくれた。お母さんの笑顔を見られて、私も嬉しかった。
こちらの文章は読みづらいところを手直しして、なおかつ言い切りで統一したパターンです。
③主語と述語が噛み合わない
以下の文章を見てみましょう。
NG
歩き疲れておなかが減ってしまい、私はおやつがおいしい。
なんだかヘンテコな文章ですね。なぜヘンテコなのかといえば、「私はおやつがおいしい」の意味がわからないためです。主語の「私は」が宙ぶらりんになっています。
たとえば「私はチョコレートがすきです」なら「私は」「すきです」という主語と述語のセットがあって、なにがすきなのかといえば「チョコレートが」ということになります。
しかし、「私はおやつがおいしい」の文章の場合、「私は」とセットになる述語が存在しないのです。
むしろ私はを削って「おやつがおいしい」だけの文章にしたら、「おやつが」「おいしい」ですっきりとセットができます。
「こんなヘンテコな文章、自分ならぜったい書かないよ!」と考える人もいることでしょう。しかし、長い文章を書いているうちにうっかりということはよくあります。
実際、私の勤めていた塾でも、生徒たちの書いた作文の中に、この手のおかしな文章はよく見かけました。読み直して確認する作業を忘れないようにしましょう。
OK
私は歩き疲れたせいでおなかが減ってしまっていた。そのため、一層おやつがおいしく感じられた。
文章が上手くても構成がわかりにくいのはNG
作文の書き方に「これが正解」というものはありません。しかし作文の苦手な子が、ゼロから文章を組み立てるのは大変です。ここでは定番の構成を紹介しますので、参考にしてみてください。
「起承転結」を意識して書こう
起 文章の内容の背景を説明します。
承 この文章で伝えたいことを伝えるための導入部です。
転 「起」「承」の流れを受けての変化です。テーマへと切り込みます。
結 まとめ
これだけだとよくわからないかもしれません。具体的な例で考えてみましょう。
起
隣の家に、アサコちゃんという女の子が住んでいました。
承
私は、無口でなにを考えているのかよくわからないアサコちゃんのことが苦手でした。きっと怖い子だと決めつけて、なんとなく避けてしまっていたのです。
転
しかし、ある日を境に、その考えは変わりました。家の前で転んでヒザ小僧をケガした私に、アサコちゃんは絆創膏を貼ってくれました。
結
その日以来、アサコちゃんと仲良くなることができました。よく知らない相手の性格を一方的に決めつけてはダメだと気づかされました。
この作文で、書き手が読み手に伝えたいメッセージは、「知らない相手の性格を一方的には決めつけてはダメ」です。その具体的な事例として、アサコちゃんとのエピソードを紹介しています。
あらかじめ段落ごとのポイントを書き出しておこう
段落ごとのポイントだけ取り出すと、以下のとおりです。
起 アサコちゃんの背景について説明
承 アサコちゃんを書き手がどう思っていたのかについて
転 アサコちゃんとの関係性の変化
結 書き手がどう認識を改めたのか
作文を書き出す前に、段落ごとのポイントを自分で取りまとめてみてはどうでしょうか。取りまとめというと大変そうですが、要はメモしておけばよいのです。
おそらく、それだけで作文の完成度はだいぶ変わってくるはずです。
骨組みがはっきりしていれば、書いているうちに内容がブレてしまう事態を防げます。
マンガ家のネームや小説家のプロットと同じようなものだといえるでしょう。ぜひやってみてください。
起承転結についてのもっと詳しい説明はこちらの記事でしています。
小学生・中学生の作文の書き方。知らないと損する起承転結のコツ - ノビコトwww.nobikoto.com
課題ごとの作文の書き方
ここからは課題ごとの作文の書き方を具体的に紹介していきます。
平和作文ってどう書けばよいの?
「平和作文」は定番の課題のひとつです。「平和」と聞くと、なにか壮大なことを書かなければならないような気持ちになりますよね。
まずは自分にとって「平和とはなにか」を掘り下げる作業が大切です。イメージをつかむため、過去の受賞作を読んでみるのもよいでしょう。受賞作はネットで公開されています。
代表的な題材は戦争
過去の受賞作には、戦争をテーマにしているものが多いです。常日頃から戦争について考え続けている子供はあまり多くはありません。なにか考えるに至ったきっかけがあるはずです。
「戦争について考えるきっかけがどんなものであったか」を導入部にしてはどうでしょうか。
広島や長崎に足を運んで、原発について学んだ経験があるのなら、そこから書き出すのもよいですし、新たに学びを深めるのもよいでしょう。
下記のような作品に触れるのもよいきっかけになります。
蛍の墓
この世界の片隅に
構成の一例は以下のとおりです。
起
戦争映画を見たり戦争に関する本を読んだりして、感じたことを述べる。
承
もし戦争が起こったら今の自分はどうなるか、なにを失うか想像する。
転
私たちが平和の大切さを忘れれば、遠くない未来に戦争をしてしまうかもしれない可能性への言及。
結
これから身のまわりの平和を大切にし、なおかつ政治や世界情勢に関心を持って学び続けようという決意を述べる。
個人の体験(きっかけ)を経て、どんな気持ちの変化があったかを具体的につづると説得力が生まれます。
読書感想文ってどう書けばよいの?
読書感想文は本を読んだ感想を人に伝えるものです。ただし、あらすじと感想をカンチガイしているケースをよく見かけます。
たとえば、「ももたろう」を読んだとして、「桃から生まれた子供が鬼を退治していた」と書いたら、これはただのあらすじですね。
では、「桃から生まれた子供が鬼を退治していた。すごいと思った」と書いたらどうでしょう。「すごいと思った」はたしかに感想です。しかし、いくらなんでも「それだけ?」って思いますよね。
塾で生徒たちの指導をしていたとき、多かったのはこのパターンです。ほとんどあらすじで感想はラストにちょっぴり。比率はむしろ逆であるべきで「あらすじちょぴり、感想たっぷり」が理想です。
「あらすじばかり書いちゃう。だって、感想なんてなんにも思いつかないんだもん!」と塾生もよく口をとがらせていました。たしかにひと言ふた言の感想ではなく、まとまった内容を述べようと思うと難しいです。
そういうときには「つなげて書こうと思わないで、まずは一言ずつでよいから、ちょっとした感想を書き出してみたら」と提案していました。
「ももたろうは志を貫いて偉いと思った」「だんだんと鬼がかわいそうに思えてきた」「桃から生まれるなんて変」、どんな感想でもよいのです。
それから、疑問に思う点も書き出してみてください。「そもそもどうして鬼は悪さをしたのだろう」「この物語で鬼とはなにを表した存在なのだろう」「ももたろうが強いのはどうしてだろう」などなんでもよいです。
もちろん、ひと言感想や疑問点を原稿用紙にただ並べても、感想文にはなりません。「どうして自分がそういう疑問を持つに至ったのか」「物語と似たような例が自分の周りにもないか」など点と点をつなげていきましょう。
公立中高一貫校などの試験対策
学校によって求められる字数には差があります。試験なので、なんとしても制限時間内に文章を完成させなければなりません。
抽象的な問いから時事問題まで、学校によって出題の仕方は違います。適性検査対策もかねて、日ごろからニュースをチェックしておきましょう。
想像力を刺激するような問いかけをしてくる学校も多いです。
「今後、宇宙人が見つかったとして、地球人と仲良く付き合っていくことは可能だと考えますか」
というのが作文のテーマだったら、あなたはどのように答えますか。
結論として「仲良く付き合っていくことは可能」「仲良く付き合っていくことは不可能」のどちらを掲げてもよいわけです。ただし、その結論を導き出すに至った根拠を上手くまとめる必要があります。
どう書いてよいのかわからないと思ったら、テーマの中に「意味がふんわりしている言葉」はないかと考えます。「意味がふんわりしている言葉」とはすなわち、このままだとよくわからないしあいまいなので、論を展開する上で「自分なりの定義づけが必要な言葉」です。
では、「今後、宇宙人が見つかったとして、地球人と仲良く付き合っていくことは可能だと考えますか」というテーマにおいて、自分なりに定義づけするべき言葉はどれでしょう。
たとえば、「宇宙人」。ひと口に「宇宙人」と言われても、きっと人それぞれ想像する宇宙人像は異なるはずです。人間と同じぐらい、高い知的レベルを誇る生き物を想像した人もいれば、ふにゃふにゃのクラゲもどきを想像した人もいるでしょう。
その宇宙人は言葉を話せるのか、あるいは言葉に代わる意思伝達の手段はあるのかによっても、結論は大きく変わりそうです。
加えて、「仲良く付き合っていく」という表現もあいまいですよね。どの程度の付き合いなのかがサッパリわかりません。争いを回避できればよいのか、はたまた一緒に暮らすぐらいのレベルなのか……。
こうした「わからない点」をぜひ切り口にしてみましょう。「もし、こうだったらこうだろう」と自分なりの仮定でもって、論を展開できるからです。
「もし、宇宙人が人間と同じような知的生命体なら、話し合いは可能だと私は考える」と書き出してもよいですし、「もし、仲良く付き合っていくという言葉が意味するのが、戦争をしないという意味合いなら実現可能だと考える」と書き出してもよいです。
持論を展開する上では前提となる条件の設定が大切になります。「なぜなら、こういう理由があるから」と説明を続けていくのです。
なお、試験に使いやすい構成として、よく「結論→具体例→まとめ」のパターンが挙げられます。実際、結論から書くとブレないですし、読み手にもわかりやすいです。具体例の数は文字数に合わせて調整してみてください。
もっとも公立中高一貫校の問題はこうしたオーソドックスな形式で書けるものばかりではないので、過去問の数をこなしてコツを身につけることが大切です。
作文は、書き方のコツさえ身につければ楽しくなる
この記事で紹介したようなコツを身につければ、読みやすい作文が書けるはずです。けれど、作文を魅力的にするのは、自分の中にある感じ方や考え方ですから、日々いろいろなものに関心を持つことをおすすめします。
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