先日、息子にごく軽度の自閉症スペクトラム(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)、発達性協調運動障害(DCD)の傾向が指摘されました。この記事では忘備録も兼ねて、これまでの経緯と現状をまとめて紹介します。わが子の発達に不安を抱えるご家庭の参考になれば幸いです。
- 発達に不安。2歳手前になっても親を振り返らない
- 2歳になり保健センターに相談。結果は問題なし
- 2歳半頃から認可外保育園に通園。特に指摘は受けず
- 3歳から認可保育園に入園。発達への懸念をほのめかされる
- 3歳半ごろに園と発達について話し合いの場を持つ
- 迷った末、一カ月後に療育に連絡をとる
- 療育初診でさまざまなテストを実施
- 療育センターで出た結果「軽度のADS・ADHD・DCDの傾向」
- できることを家庭でしつつ経過観察
- 追記 五歳現在の状況
- 子供の発達にモヤモヤがあれば、療育に連絡を
発達に不安。2歳手前になっても親を振り返らない
子供が1歳になり歩けるようになると、行動範囲が広がります。私は心配性なので、外遊びなどで娘や息子に少し気になるところがあると、いちいち発達と結びつけて「どうなんだろう」と考えてしまっていました。
とりわけ、息子は目を離すとどんどん一人で行ってしまうマイペースな性分だったため、不安に思う機会が多かったです。公園遊びでは娘を抱っこしてひいひい言いながら、息子を追いかけ回していました。
ただし、当時、マイペースさ以外で気になる点は特になかったです。運動面での発達は常に平均より早めで、1歳10か月で目を離した隙にジャングルジムの一番上まで登ってしまうような子供でした。言葉は1歳半の時点でギリギリ5語話せていました。
2歳になり保健センターに相談。結果は問題なし
2歳になると、1歳までのようなケースは少なくなり、親を気にして行動するようになってきました。しかし、落ち着きのなさはほかの子供に比べ目立つように感じました。
当時、わが子と同じ2歳児を連れた親が、子供を先導して歩く姿を目の当たりにしぎょっとしました。「ちゃんと子供が後をついてくるなんて!」。
当時は親が先を歩いて、おとなしくついてきてくれたためしがなかったのです(これは娘も同様でした)。
「息子の発達はどうなんだろうか」とうんうん悩んだ末に、勇気を出して保健センターに電話しました。
その際、一度、発達に不安のある子供たちの集まりに参加しないかと勧められました。専門家が、子供たちの遊んでいる様子をチェックし、問題が認められれば受診を進めるシステムです。
しかし、2回参加してみたものの「問題はない。遊んでいる際はじっと動かず熱中し、集中力もしっかりある。多動の子供はもっとあちこち動き回るものだ」と言われました。
それどころか、「むしろ、お母さんが双子育児に疲れているのではないか」と私自身が心配されることに。とりあえず専門家が大丈夫というなら大丈夫だろう、と前向きにとらえました。
2歳半頃から認可外保育園に通園。特に指摘は受けず
2歳半頃に認可外保育園に入園しました。連絡帳では、「集団行動にだんだん慣れてきた」と前向きな報告のみで、なにか問題を指摘されたことは一度もありませんでした。先生とのお話でも出てくるのは、その日の面白エピソードのみ。
そのため、私は「集団行動ではちゃんとほかの子供にも合わせられるんだ! すごい!」と呑気に誤解していました。おそらく、認可外保育園でもかなりマイペースに振る舞っていたと推測されるのですが、園として指摘しない方針だったのでしょう。
3歳から認可保育園に入園。発達への懸念をほのめかされる
3歳になり認可保育園に移る際に、新しい園から「子供の性格についてなにか懸念があるか」と聞かれました。娘の激しいイヤイヤが悩みの種で、息子への問題意識が薄れていた時期でした。
そのため、「関心のあるものに一直線に行ってしまうところがあるけれど、通っていた園で集団行動ができていたようなので、慣れれば大丈夫かなと思います」と能天気な見解を伝えました。
しかし、入園後すぐの3歳児健診でお休みした翌日、園の保育主任から「どうでした? なにか言われましたか」と熱心に尋ねられ、「これってもしかして」とギクリ。
実際、なにも言われてなかったので「なにも」と答えたのですが、「なにか気になる点とか」と重ねられさすがに確信。「オブラートに包んでくれてはいるけど、発達を懸念されてる!」動揺で汗が滲みました。
オロオロしながら「健診ではなにも言われなかったのですが、園としてなにかお気づきになった点があればぜひ教えてください」と伝えると「いえいえ。たまたま健診があると担任から聞いていたのでちょっと聞いてみたくて」とのお返事。
「まだ慣れなくて教室から出て行ってしまうときがあるんですが、それ以外は特にありませんよ。またなにかあればこちらも伝えますが、ご家庭でもなにか気になることがあれば教えてください」と締めくくられました。
正直、頭の中で「ガーン」と古典的な音が聞こえるぐらいにはショックでした。2歳のときの不安が一気によみがえってきたので、直後に担任の先生にも質問してみました。
「あの、息子が教室から出ていってしまうことがあるというお話ですけど、どうでしょう。大丈夫でしょうか」と尋ねると、担任の先生は笑顔で「物覚えはすごくよくて一回教えたことは翌日に全部やってくれます。大丈夫ですよ。補助の先生も入りますし」とのこと。
補助の先生も入りますし……。それは、補助の先生が入らなければ難しいぐらいご負担をおかけしているということだろうか。再び息子の発達についてモヤモヤと考えるようになりました。
外遊びにおいては、公園の滑り台の順番は待てるけれど、外出先で物珍しいものを前にすると、途端に順番を待てなくなる時期でした。
3歳半ごろに園と発達について話し合いの場を持つ
その後も保育園から特に発達について、話を振られることはありませんでした。
3歳半頃、「娘と息子で園が分かれているため、転園を検討している」と伝えると、ついに園から「一度息子さんのことについて話したい」との申し出。来るべきときが来たというのがそのときの実感です。
「転園の引継ぎを考慮した上での、発達の話なのではないか」。実際、その予感は当たっていました。
要約すると、「入園当初は発達に問題があるのではないかと感じた。園に慣れてからルーティンは問題ない。日々の様子を療育の専門家が見ても大丈夫だと言うだろう。そのため、園としては発達障害とまでは思っていないが、イベントごとや送迎時など、ときどき感情の切り替えがうまくいかないところがあり気になっている」との内容でした。
「療育を受けたほうがよいか」と聞くとそういう感じでもないようで「もし、お母さんが不安に思うことがあれば、そのときは電話相談にでも乗ってもらったらどうか」と言われました。
迷った末、一カ月後に療育に連絡をとる
てっきり「療育に行ったほうがよい」と指示されると思っていたので、どうするべきかよくわからなくてしばらく悩みました。
ただ面談から一カ月後にあった園のクリスマス会で、息子がひとり「もういやだ。おうちに帰りたい」と落ち着きをなくしているのを見て、これは相談したほうがよいと感じました。
クリスマス会の練習の時点で、どうも雰囲気に呑まれてしまって落ち着かないとは聞いていましたが、実際に目にするとショックでした。
療育に電話し、これまでの経緯を説明すると、「2~3か月先になるけれど」との断り付きで初診を案内されました。
療育初診でさまざまなテストを実施
療育初診ではケースワーカーさんにこれまでの経緯を説明したあと、さまざまなテストを受けました。
積み木をしたり、パズルを解いたり、まねっこをしたり、絵を描いたり、質問に対して受け答えをしたり、椅子からジャンプするよう言われたり。
すぐ飽きたらどうしようかと心配しましたが、息子は割とまじめに取り組んでいました。
療育センターで出た結果「軽度のADS・ADHD・DCDの傾向」
テストの点数では、「運動性」の点数が低いことが判明しました。
1歳のときにジャングルジムを制覇し、常に駆け回っている子供である息子の運動性が低いとはこれいかに、と思ったのですが、「運動性」とは手先の器用さやバランスを要する運動(ケンケンパなど)がちゃんとできているかということだそうです。
息子は箸が苦手ですし、丸を描くといびつになります。こういう運動性の低さは「発達性協調運動障害(DCD)」に当たるとのことでした。根底にあるのは自閉症スペクトラム(ASD)で、ASDとDCDがセットの人はそれなりの割合いるそうです。ASDと併発という点ではADHDも同様とのことでした。
「自閉症」と聞くと字面から物静かでコミュニケーションを拒むイメージがあるかもしれません。しかし、わが家の息子は社交的で、人なつっこく、表情が豊かです。よくしゃべりますし、ほかの子供と遊ぶのも大好き。今まで私が持っていた「自閉症」のイメージがいかに狭いものだったか実感しました。
息子の場合は好きなものに集中しすぎてしまう、という症状だそうです。集中力がありすぎて、気持ちが切り替えられないため、集団生活で目立ってしまうという診断でした。
ASDもADHDもDCDもごく軽度であり、一般的にはグレーと言われるレベルだとのこと。成長の仕方や環境によっては、定型発達の子供とさして変わらないかもしれないと言われました。
なお、ここが親の側にはわかりづらいところだったのですが、息子の場合、「ASD・ADHD・DCDの診断が下りたわけではない」そうです。
最初はよくわからず「診断された」と受け止めていたのですが、後日確認したところ「診断された場合は、すぐに手帳を案内しているので、あくまで傾向を指摘したということになる」と説明を受けました。
見て覚える力や聞いて覚える力はやや高めだから、勉強は得意かもしれないそうです。一方で、読み書きの読みは得意でも書きで苦労するかも、との指摘がありました。
少なくとも大学までの進学や就職には問題ないそうです。「小学校で支援級に進む必要があるとかそういうのは?」と尋ねると、「いえいえ、まだそういうのは全然」との答え。とりあえずは年二回の経過観察に落ち着きました。
できることを家庭でしつつ経過観察
「気持ちを切り替えさせたいときは新しいものへ関心を移す」「できる範囲で親も寄り添う」など、子供との接し方について医師からアドバイスを受けました。特別な訓練が必要なわけではない、とのことだったので、そのまま帰宅。ショックは少なかったです。
むしろ、厳しくすべきなのか、寄り添うべきなのか、どちらが正解なのかわからないで悩んでいたため、方針がはっきりし救われる思いでした。
自閉症についての本を買ったので読んで勉強する予定です。先日、トランポリンも購入しました。平衡感覚によいと聞いたので子供たちが楽しく遊んでくれればと考えています。今後、休みの日には家庭でできる範囲で手を使う遊びをさせていきたいです。
私の住んでいる自治体では、子供の発達に疑いがあると親の点数とは別枠で、保育園の選考を進めるそうです。その結果、今年、転園はかないませんでした。来年どうするかは子供の状態を見ながら考えていきます。
今の園には結果が出てすぐ、詳細を報告しました。特性を理解した上で、愛情をもって息子を見守ってくれる園のため、とてもありがたいです。
追記 五歳現在の状況
保育園では集団行動ができています。自分の興味優先なので、ほかの子供よりテキパキできないところはままあれど、行事にも参加し、大きな問題はありません。だいぶ落ち着いてきたなあと感じます。
療育センターからは、ASDとADHDの傾向は「個性」としてとらえてよいレベルではないかと言われました。
(ただし、ASDとADHDの傾向は小学校進学後、環境の変化を受けて再び顕著になる可能性もあると言われました)
DCDも現状の発達なら該当しないそうです。読み書きの「書き」はひらがなとカタカナが間違いながらも書けるレベルになっています。自転車も補助輪なしで運転可能です。
ただ、とある園行事のあと、緊張の糸がプツンと切れたのか、二週間ぐらい気持ちが落ち着かない時期がありました。その期間は園でも指示が上手く通らなかったようです。のんびりした性格の息子ですが、「友達に初めて声を荒らげる場面もあってびっくりしました」と報告されました。
そうした状況を受けて、小学校では通常級に進み、通級指導教室を週一で利用することに決めました。進学予定の小学校の通級指導教室は、授業を抜けて個別指導の形態をとるそうです。主に感情のコントロールを学ぶ時間とのお話でした。
必要かどうかは微妙なラインだったため、迷ったのですが、時期や環境の影響でまだまだ安定しない様子を見て園や小学校と相談し決断しました。もともと、必要性を考えて通級指導教室のある小学校の学区に家を買ったという経緯もあります。
「実際、他校通級は送迎が大変なので、最初から通級指導教室のある学区を選ぶ人はけっこういますよ」と、進学予定の小学校から説明を受けました。
子供の発達にモヤモヤがあれば、療育に連絡を
子供の発達でモヤモヤを抱えていると、つい園に背を押してほしくなるものです。平均的な子供の発達がどの程度か、親はよく知りません。私も双子の妹と発達を比べることしかできませんでした。
なにより子供の発達に疑念を抱くことに、漠然と罪悪感を持っていました。園が言ってくれたらふんぎりがつくのに、と身勝手な思いでいたときもあります。
しかし、園は園で、家庭の気持ちを慮り明言を控えがちです。家庭や子供を無為に傷つけないためには慎重にならざるを得ないのでしょう。発達障害の可能性を伝えて、親がすぐに受け容れられるとも限りません。
私としては、今回の経験から、子供の発達についてモヤモヤがあるのなら思い切って療育に連絡をとることをおすすめしたいです。プロの目で現状を分析してもらい、なにが子供にとってプラスになるのかを教えてもらえてよかったと、いま心の底から思っています。
おすすめ記事