滑車の問題は、一見ややこしく見えます。しかし、仕組みさえ理解できればスムーズに解けるようになるものです。この記事では、定滑車と動滑車を組み合わせた問題を解ける力をつけることを目指します。
定滑車ってなに?
定滑車とはどういうものでしょう。
定滑車は固定された滑車
定滑車は、「固『定』された滑車」です。滑車そのものは上下に動かないよう固定されています。固定された車にひもをかけて、ものを上げ下げするのに使う道具です。
定滑車の支点・作用点・力点
真ん中に支点があり、作用点と力点はそれぞれ支点を挟んだ両側です。支点から作用点までと、支点から力点までの距離は等しくなります。
このとおり支点が真ん中にあり、支点から作用点と支点から力点まで距離は同じです。
そのため、
おもりと引く力の大きさのつりあいをとろうと思ったら(紐を引いて、おもりが浮いたまま動かない状態にしようと思ったら)
引く力の大きさ=おもりの重さ
になります。
定滑車の「滑車を支える点」
滑車を支える点(天井に滑車が固定されている点)にかかる力=おもりの重さ+引く力の大きさ+滑車の重さ
です。
定滑車の場合、支える点にはすべての力がかかります。
定滑車の場合、引く向きが変わっても力は変わらない
定滑車はひもを引く向きを変えても、力の大きさは変わりません。
定滑車のひもを引く距離
定滑車のひもを引く距離は、おもりを持ち上げる距離と同じです。
おもりを2m持ち上げたければ、ひもも2m引きます。
動滑車ってなに?
動滑車とはどういうものでしょう。
動滑車は車そのものが動く
動滑車とは車そのものが上下に動く滑車です。
動滑車の支点・作用点・力点
動滑車の場合、定滑車とは支点、作用点、力点の位置が異なります。
上図の動滑車の支点・力点・作用点は以下のとおりです。
支点が天井に固定されている側
力点は引っ張られている側です。
見てのとおり、動滑車の場合は、支点から力点の距離が支点から作用点の距離の二倍です。
したがって、
(引く力の大きさ)={(おもりの重さ)+(滑車の重さ)}÷2
です。
動滑車の「滑車を支える点」
下図を見てください。動滑車の「滑車を支える点」は天井側のひもを固定している部分です。
動滑車の場合、
(滑車を支える点にかかる力)=(引く力の大きさ)
となります。これだけ聞いてもよくわからないかもしれませんね。
下図を見てください。
向かって左は定滑車だけですが、右は定滑車と動滑車の組み合わせです。
定滑車だけの場合、おもりの重さそのままの力で引っ張ればよいです。
動滑車の場合、動滑車にかかっているひもを数えます。上の場合は2本ですね。
おもりの重さ÷2本でひも1本あたりにかかる重さを求めることができます。
ただし、これは動滑車の重さを考えない場合です。
(よく問題文に『軽い滑車』という表現が出てきますが、これは動滑車の重さは考えなくてよいという意味です)
動滑車の重さが問題文で指定されている場合は、動滑車の重さを足す必要があります。
(引く力の大きさ)={(おもりの重さ)+(動滑車の重さ)}÷2です。
また、上図を見ると、天井に吊るしている側のひもにかかる力(滑車を支える点にかかる力)は5kgですね。そしてひもを引く力も5kgで同じになります。
動滑車では
(滑車を支える点にかかる力)=(引く力の大きさ)なのです。
動滑車の場合、「おもりを引き上げる距離」の倍が「紐を引く距離」
上図を見てください。赤い矢印ひとつ分の高さまでおもりを動かすためには、赤い矢印二つ分の距離、ひもを引いています。
動滑車のひもを引く距離を求める公式は
(ひもを引く距離)=(おもりを持ち上げる距離)×(動滑車にかかっているひもの本数)
です。
仮に上図の赤い矢印ひとつ分が1mだとして公式に数字を落とし込むと、
2m=1m×2本
になるわけです。
定滑車と動滑車を組み合わせた問題
以下の問題はすべて動滑車の重さを考えない問題です。
上の図のように滑車に3本のひもがかかっている場合おもりの重さは三つに分かれます。
そのため、引っ張る力は1÷3=1/3kgです。
上の図のように動滑車にひもが四本かかっている場合、おもりの重さは四つにわかれます。引っ張る力は1kg÷4=1/4kgです。
上の図には動滑車ふたつでひとつのおもりを支えています。動滑車ふたつにかかっているひもの本数は4本です。おもりの重さは四つにわかれます。1÷4kg=1/4kgです。
ひもを引く距離の問題
ひもを引く距離の問題を見ていきましょう。
一本のひもを使った滑車の組み合わせの問題
先ほど、
定滑車の場合は
(おもりを持ち上げる距離)=(ひもを引く距離)
動滑車の場合は
(ひもを引く距離)=(おもりを持ち上げる距離)×(かかっているひもの本数)
と説明しました。
では、下図でおもりを1m引き上げた場合、どうなるでしょう。
(ひもを引く距離)=(おもりを持ち上げる距離)×(動滑車にかかっているひもの本数)ですから、
ひもを引く距離=1m×2本になります。つまり、2mです。
では、下図で、おもりを2m引き上げた場合はどうでしょう。
(ひもを引く距離)=(おもりを持ち上げる距離)×(動滑車にかかっているひもの本数)
(ひもを引く距離)=2m×4本、つまり8mです。
複数本のひもを使った滑車の組み合わせの問題
下図を見てください。三本のひもを使って動滑車と定滑車を組み合わせています。
200gのおもりをつけると引く力はいくつになるでしょう。
考え方は下図のとおりです。
ひとつの動滑車にかかるひもは2本なので、重さは半分ずつになります。定滑車の場合、重さは変わりません。
よって、上図のように考えることができ、引く力は25gです。
200gのおもりが25gの引く力でつりあうということは、引く力の8倍がおもりの重さです。
ここで重要なポイントです。複数本のひもを使う問題のときは、動滑車にかかっているひもの本数ではなく、ひもを引く力とおもりの重さから、ひもを引く距離を求めます。
ひもを引く力がおもり1/8のとき、ひもを引く距離はおもりを持ち上げる距離の8倍になります。
つまり
ひもを引く力1に対しておもりの重さが8なら
ひもを引く距離は8、おもりをもちあげる距離は1なのです。
したがって、ひもを引く距離は8mです。
定滑車と動滑車の違いを理解しよう
定滑車と動滑車では引く力を求める計算がまったく違います。公式を分けてしっかりと覚えましょう。動滑車の問題は一見複雑そうに見えるかもしれませんが、動滑車にかかるひもの本数を数え間違えなければ大丈夫です。
このあたりの単元が全体的に苦手であれば、下記のような映像教材を活用するのも手です。
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