月の満ち欠けの単元では、「地球から見た月を想像する力」が求められるため、多くの子供が躓きます。この記事では、子供たちの間違えやすいポイントを掘り下げて解説していきます。
- 月の自転と公転。月は常に同じ面を地球に見せている
- 月の満ち欠けの周期を知ろう。月の形は変化する
- 月の満ち欠けの周期と月の自転・公転の周期は異なる
- 太陽の当たっている方が昼。反対側が夜
- 三日月の反対向きバージョンに名前はあるの?
- 上弦の月とは? 月の形・読み方・由来・見える時間
- 下弦の月とは? 月の形・読み方・由来・見える時間
- 満月の見える時間って? 動き方を見てみよう
- 上弦の月と下弦の月 逆向きになる理由がわかりにくい?
- 日本とオーストラリアでは、半月の見え方は逆向き
- 翌日同時刻、月の位置はズレる
- 月の見え方、模様の解釈は世界中バラバラ
- 月の周期は、自分で4通りの図を描いて覚えよう
月の自転と公転。月は常に同じ面を地球に見せている
自転の話をすると、生徒からこんな質問が出ます。
「先生、月が回っているなら、『月のウサギ模様』が見えない日もあるの?」
「ううん、月は地球にずっと同じ面を見せているからね」
「同じ面を? 回ってるのに? どうして?」
さて、どうしてでしょうか。
月の回転には二種類あります。「自転」と「公転」です。
自転は字面どおり自分が回転すること、公転はほかの星の周りを回ることです。
月は自転の周期と公転の周期が完全に一致します。どちらも27.3日です。
もし、仮に月が公転せず自転だけをしていたなら、月のいろんな面が見られるでしょう。
あるいは、自転と公転の周期がずれていたなら、違う面が見られるはずです。
しかし、月は自転周期と公転周期がぴったり同じ。回転しながら位置を変えていくため、地球から見える面も同じままなのです。
加えて、回転する方向が同じ点も重要です。
下の図を見てください。自転・公転ともに反時計回りです。
もし、自転と公転の向きが同じではなく逆で、時計回りと反時計回りだったら、こんな風に同じ面だけ見ることはできません。
「どうして、月は地球から見てずっと同じ面なの?」という問題に対しては
・月の自転周期と公転周期が一致
・月の自転と公転の向きが同じ
両方の答えを書かないと正解にはなりませんので、気をつけたほうがよいでしょう。
月の満ち欠けの周期を知ろう。月の形は変化する
月の満ち欠けを図にすると以下のとおりです。ただし、問題によって太陽の位置が違うので注意しましょう。
もし太陽が上の図のように、向かって右ではなく、向かって左に書かれている場合はどうなるでしょうか。
光の当たっている場所が上の図とは真逆になりますね。
よく図を丸暗記して覚えて、太陽の位置を見ずに答えを書き込んで、間違えるケースを見かけます。注意するとよいでしょう。
月の満ち欠けの周期と月の自転・公転の周期は異なる
月の満ち欠けは29.5日周期です。これは、自転・公転周期の27.3日より長いので注意してください。
「なんで日数が違うの?」というのも生徒からよくきかれる質問です。
月の満ち欠けはあくまで地球から見たものです。もし、地球がじっと動かなければ、月は自転・公転周期と同じ27.3日で満ち欠けすることになります。
しかし、実際には地球は太陽のまわりを公転しています。
すると、地球が動く分、月も動かなければ満ち欠けにならないわけです。なので、月の満ち欠けのほうが周期が長くなります。
「なぜ日数にずれがあるのか」という問題が出たら、「地球が公転しているため」と答えるのが正解です。
太陽の当たっている方が昼。反対側が夜
下図の地球を見てください。太陽のあたっているほうが昼、逆側が夜です。
自転の向きが反時計回りであるため、時間の流れも反時計回りになります。
つまり、この図でいえば、上側が夕方・下側が朝になります。
朝→昼→夕方→夜
反時計回りになっているのが、おわかりでしょうか。
三日月の反対向きバージョンに名前はあるの?
さきほどの図で新月の手前(下)にある三日月の逆向きバージョン。この月の名前は「暁月」です。読み方は「ぎょうげつ」。「暁(あかつき)」とは夜明けのことです。つまり夜明け頃に見える月を意味します。
上弦の月とは? 月の形・読み方・由来・見える時間
「上弦の月」は「じょうげんのつき」と読みます。
「上弦の月」の名称の由来には諸説あります。
ひとつは新月から一カ月を数えるとき、上旬の半月だから「上弦の月」と呼んだ説。もうひとつは月の形を弓に見立てたとき、弦(直線)の部分を上にして沈むから「上弦の月」と呼んだ、という説です。
上弦の月はこの図を見るとわかるとおり、昼ぐらいから空に見え始めます。朝は真逆の位置ですから、上弦の月は見えないのです。
ただし、昼は太陽の光があるので、光っている姿は見えません。夕方に真上(南中)、深夜になると西に沈んで見えなくなります。
上弦の月の見え方をピックアップすると下図のようになります。
上弦の月
昼に東からのぼる(日中のため光っていない)
夕方に南中
夜に西へと沈む
下弦の月とは? 月の形・読み方・由来・見える時間
「下弦の月」は「かげんのつき」と読みます。
「下弦の月」の由来も、先ほど紹介した上弦の月同様に、時期からくる「下旬の月」説と、「弦を下にして沈む月」説があります。
上弦の月と同様に、下図から見え始める時間と見えなくなる時間について考えてみましょう。
上図を見ると、夜に下弦の月が見え始め、昼になると沈んでいくのがわかります。
下弦の月
深夜に東からのぼる
明け方に南中
昼に西へと沈む(日中のため光っていない)
満月の見える時間って? 動き方を見てみよう
満月はとても覚えやすい動き方をします。
上図を見ると、夕方から見え始め、朝になると沈むのがわかるでしょう。
満月
18時ごろ東の空からのぼる
午前0時に南中
6時ごろ西の空へ沈む(太陽が出ているため光っていない)
上弦の月と下弦の月 逆向きになる理由がわかりにくい?
まずはこの図を見てください。
注目すべきは下弦の月の部分です。
ちなみに、太陽の位置が真逆の図であれば、下弦の月ではなく上弦の月で同様のひっかかりがあるかもしれませんね。さて、この理由を見ていきましょう。
結論から言うと、逆向きだから反対になるのです。
「どうして逆の位置になると反対になるの?」という人は以下の動作をやってみてください。
右手をあげて前を見る。
次に
左手をあげて後ろを見る。
どうですか。
手は右と左で変えているけれど、挙手した手の方角自体は一緒ですよね。
月も同じ理屈です。
光っている部分の左右は変わりますが、太陽の光が当たる方角は一緒なのです。
日本とオーストラリアでは、半月の見え方は逆向き
北半球にある日本と南半球にあるオーストラリアでは同じ月を見ていても、逆向きに見えることをご存じでしょうか。
これは日本から見て南の空は、オーストラリアから見ると北の空になるためです。
この理屈がわからない人は以下のことを試してみてください。
紙に濃いペンで半月を描く
掲げて見る。
反対側に立って、紙を裏から透かして見る。
半月が左右が逆になることが理解できるはずです。
翌日同時刻、月の位置はズレる
ある日とその翌日、同じ時間に月を見上げたとします。
すると、月の位置は前日に比べて12度ズレているのです。
どうしてこんなことが起こるのでしょうか。理屈は以下のとおりです。
東に浮かぶ上弦の月から、西に浮かぶ下弦の月までの変化の日数が約15日。
約180度移動するのに約15日かかるわけですから
180÷15=12で、1日あたり約12度のズレです。
もしくは一周するのに360度で約30日。360÷30=12、約12度と考えてもよいでしょう。
さて、地球は一日あたり一回自転しています。つまり、360度回転するのに24時間かかります。
360度÷24時間=15度です。つまり、一時間=15度です。
となると、12度のズレが何分かは
15:12=60分:□
で計算できます。
□は48分ですね。よって、月は一日あたり48分、つまり約50分遅れるのです。
さて、鋭い方はお気づきでしょうが、先ほどから数字を出すたび「約」を強調しています。
本当は月の公転と地球の公転が絡み合い、理屈はもう少し複雑なのです。そもそも、「30日で計算する」こと自体、ザックリしてますよね。
12度のズレについて、もう少し厳密に掘り下げてみましょう。
一周とは360度。月の公転周期は27.3日です。
360度÷27.3日=13.18…
ということで、月が動く角度は一日あたり約13度の計算になります。
一方、地球は一日で約1度同じ方向に公転します。
どうして1度だとわかるかといえば、一周が360度で、一年が365日ですから
360÷365=0.9863……で、約1度というわけです。
そのため、毎日、同じ時間に夜空を見ると、月は13―1=12度ずつズレて見えます。
月の見え方、模様の解釈は世界中バラバラ
最後に雑談ですが、月の模様の見え方については世界中で解釈がバラバラです。
日本では月の模様は「うさぎ」だとされています。これはインドでも同様です。
中国ではカニ。アメリカではロバ。ヨーロッパでは女の人の横顔、アラビアではライオンだとされています。
月の周期は、自分で4通りの図を描いて覚えよう
ぜひ一度、なにも見ずに、地球を真ん中にして月の満ち欠けの図を描いてみてください。太陽の当たっているところは白く、夜の側は黒く塗ります。
「どの位置にきたとき、どんな形に月が見えるか」を自分で描けるようになれば、多くの問題が解けるはずです。上弦の月や下弦の月、満月の見える時間も、図さえ描ければ丸暗記するまでもなく理解できます。
太陽の位置を上下左右、4通り動かしてみてそれぞれの図が描ければ完璧です。
ちなみにわが家には小学館NEOの「宇宙」図鑑があります。同じく小学館の図鑑NEO『星と星座』も持っていて重宝していますが、月に関しては「宇宙」図鑑のほうが詳しいです。
DVDもついているので、ドラえもんのナビゲーションで宇宙映像も楽しめます。
図鑑では、計10ページにわたって月が特集されていて読み応えがあります。満ち欠けの説明もありますし、全ページ美しい写真が堪能できるためおすすめです。
教科書より抵抗感少なく天文知識を学べるのでよいのではないでしょうか。うちの4歳児もだいすきです。
ただし、図鑑なのでそれなりに重たいですし置き場所はとりますが……。
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