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ノビコト

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【不合格・やめたい】中学受験での挫折。子供の気持ちとの向き合い方

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近年、中学受験における狭き門をめぐる競争は熾烈です。念願叶って第一志望に合格できればよいですが、第一志望に受かる子供より落ちる子供のほうが多いことは、受験の倍率を見ても明らかです。

 

塾講師時代、不合格になった、あるいは中学受験をやめる決断をした子供が、挫折感を引きずるケースを見てきました。また、子供のみならず親が挫折感からなかなか立ち直れないケースもあります。この記事では、中学受験をめぐる挫折およびその対処法について紹介します。

 

 

中学受験に落ちショックを受けた親子

県下一位の男子校を狙っている教え子がいました。抜きんでて優秀で、模試の判定も安定。親も周囲も当然のように受かると思っていました。

 

第一志望校受験当日はやや風邪気味だったそうですが、発熱していたわけではありません。それにもかかわらず、緊張も手伝ってか、あろうことか落ちてしまったのです。ちなみに、第二志望以下の滑り止めは軒並みすべて合格でした。

 

落ちた第一志望校と受かった第二志望校では大きく校風が異なり、対照的でさえありました。第一志望が自由をなにより重んじる放任主義な学校、第二志望は補習に力を入れる詰め込み型の学校です。

 

彼はやむを得ず第二志望へと進んだのですが、思い描いたイメージとの齟齬にしばらくの間、挫折感を引きずったそうです。なにより、支えてくれた家族をガッカリさせてしまったことが堪えたようでした。卒塾して半年後に塾に遊びにやってきて「いまだに親からどうして落ちたんだろうねーって話をされるんだけど、正直やめてほしい。そんなん俺が一番思ってることなんだからさ」とぼやいていたことがあります。

 

彼は、「新生活が始まった自分よりも、親のほうがなんか引きずってるんだよね。それだけいろいろ大変だったのはわかるけど」と苦笑いをしていました。中学受験は別名「親の受験」です。子供の伴走者として時間と労力を費やしてきた親は、当事者ではないからこそ、気持ちの切り替えが遅くなる傾向にあります。

 

ただその一方で、子供に落ち込む姿を見せ続けると、どうしても子供は「自分のせいで」と自責の念を覚えます。中学受験において不本意な結果が出たとしても、「どうして」「なんで」という気持ちの表出は、できるだけ大人同士のやりとりに留めるとよいでしょう。

 

なかなか気持ちの整理がつかないのであれば、塾にもぜひ相談に来てください。塾は各学校の情報を豊富に持っていますから、進学する学校のメリットをいろいろ教えてくれるはずです。

 

全落ちを受けて公立校へ進学した子

私の勤めていた塾にも、全落ちした生徒はいました。とても活発な男の子でしたが、勉強に関してはやる気なし。熱心にスポーツをやっていたため、疲れで塾で寝入ってしまうことがしょっちゅうありました。

 

楽天的でカラッとした性格なので、どれだけ現状がまずいのかを塾講師たちが口々に説明しても、「またまたそんなこと言って。まあ見てて。そのうち本気出して滑り止めぐらいには受かるからさ」と流されてしまいます。

 

いっそスポーツに集中して公立校に行ったほうが本人にとってはよいのではないか、と塾長から保護者に話もしたそうですが、「公立は考えていないし、本人も私立に行きたがっている」とのお返事でした。

 

結局、受験校の全てが不合格になりました。いわゆる「全落ち」状態です。

 

その子は受験直前まで全落ちなんて事態を想像だにしていませんでした。勉強に身が入りだしたのは本番一カ月前のことです。「ここからのラストスパートだから!」と焦りつつ笑っていました。

 

その年、全落ちだったのはその子ただひとり。

 

彼は塾で最下位だったわけではありません。下から二番目でした。最下位だった子供は、最後の三か月頑張ったおかげで、その子の第一志望に受かっていました。ずっと侮っていた友達の合格を知ったとき、彼は表情を失って教室を後にしました。あのときの表情は何年経っても忘れられません。

 

一年後に、彼はふらっと塾に遊びに来ました。「俺、公立にしてよかったよ。だって私立組、みんな大変そうじゃん」と笑って話してくれました。もちろん、強がりもあったでしょうが、その意見はあながち間違っていないと私は感じました。公立中学には公立中学のメリットがあるのです。なお、全落ちしたときの対応や公立中学のメリットについては、以前いくつかの記事で紹介しています。

【全落ち】中学受験失敗。元塾講師が教える、全ての受験校に落ちた場合にやるべきこと

【全落ち】中学受験で滑り止め校が不合格。その後の再スタートは?

【私立か公立か】子供の教育費っていくらぐらい? 知っておきたいお金の話

 

両親が私立中学出身だと「私立中学じゃないとダメ」と考えがちですが、公立中学にも魅力はたくさんあります。もし全落ちしてしまったら、少しずつ公立校の魅力を伝えてあげてください。受かるかどうか危ない、と感じた時点で早めに話しておくと、子供も受け入れやすいでしょう。

 

受験をやめる。その決定に納得できなかった子

とてもまじめで素直な性格なのに、社会や理科の宿題の達成度が覚束ない女の子がいました。たとえば、「社会テキストの〇ページまで、基本問題だけでいいから解けるようにしてきて」と伝えます。まじめな子供であればたいてい九割は仕上げてくるものですが、彼女は三割程度。本人は「何度もやったんですけど」と言います。その言葉に嘘はない様子で、担当講師である同僚は頭を抱えていました。

 

塾講師間で相談し、「覚え方がわからない子供もいるよね。とにかく覚え方をこと細かに説明して本人に合ったやり方を探そう」という結論に達しました。担当講師は粘り強く指導したそうですが、次に来たときにチェックするとやはり理解は3割程度。

 

算数や国語で伝えたノウハウは少しずつ身になっているのに、社会や理科でなにかを覚える作業だけはどうやっても軌道に乗りません。

 

ご家庭との面談時に現状を伝えて「本人が不真面目なわけではない」旨も説明したそうです。「暗記が極端に苦手なタイプなのかもしれない」とご家族も悩まれました。「文字情報が頭に入りにくいのであれば、図版や動画、音読はどうだろう」と担当講師は試行錯誤していましたが、なかなかよい結果にはつながらなかったようです。

 

結局、彼女は小学5年生半ばから中学受験を目指したという事情もあり、「このままでは志望校に間に合わない」と、親御さんの判断で中学受験を諦めるに至りました。本人は「せっかく頑張ってきたのに」と落ち込んでいたそうです。

 

本人は、ランクを下げても中学受験を続けたいと主張していましたが、親御さんには「受験をするならこのレベル以上の学校」という明確なラインがありました。最後まで家庭内での合意形成ができないまま、受験をやめる決定となったのは残念なところです。

 

もちろん、中学受験や私立中学への通学にはお金がかかりますから、「このラインはメリットあり」という線引きをする作業は大切です。中学受験をやめるなら早めのほうがよいのも確か。しかし、当事者である子供が納得していないまま強行すると、どうしても後々までそのときの感情を引きずってしまいます。

 

できるだけ家庭で話し合いの場を設けましょう。話し合いの際には、夫婦間であらかじめ意見を擦り合わせておいてください。できれば「中学受験をやめる」と決めてしまう前に、「この目標が達成できたなら中学受験を続ける」という条件を用意しておくとよいでしょう。条件はできるだけ子供の側から提案させてください。ただし、あまりにハードルが低くては条件の意味がないので、話し合いの中でブラッシュアップが必要です。一方的に「やめるよ」と通告することだけは避けるようにしましょう。

 

中学受験での勉強は決して無駄ではない

中学受験は挑む家庭の数だけドラマがあります。ひとつ確かなこととして言えるのは、たとえ中学受験に失敗したとしても、そこで身に着けた知識や学力は公立中学に進むにあたり大きな強みとなるということです。

 

中学受験で優秀な学校に進んでも、その中でよい成績がとれるかどうかはわかりません。しかし中学受験のために勉強した内容を生かせば、公立中学でよい成績をとることは可能です。よい成績をとれればそれは成功体験となります。

 

仮に中学受験で挫折感を覚えたとしても、その先で成功体験を積んで未来を切り開けるかもしれません。子供が公立中学への進学を前向きに考えられるよう、ぜひ後押ししてあげてください。

 

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