SAPIXであれ他の塾であれ、合わなくて転塾する子供は珍しくありません。元中学受験塾の講師として転塾してくる子供はたくさん見ています。
一方で、転塾するかどうかを決めるにあたっては、慎重な判断が必要なのも事実です。
この記事では、SAPIXに合わなかった場合の対処法について紹介します。
- SAPIXに入室したけれど合わない!原因はなに?
- 遅くまで授業があって大変! 学年別時間割
- SAPIXについていけない場合の3つの選択! 学習の見直し・教育サービスの併用・転塾
- SAPIXが合わない場合は子供の状況に合わせた対処を
SAPIXに入室したけれど合わない!原因はなに?
SAPIXに入室したけれど、合わない子供にはどんなケースがあるのでしょうか。
スピードと難易度についていけない
「受験エリートのSAPIX」という言われ方をするとおり、SAPIXはスピーディーで難易度の高い塾です。ノウハウを生かしたカリキュラムや受験動向に合わせて進化し続ける教材、クオリティの高い授業で、他塾の追随を許しません。中学受験業界を牽引する存在ですが、それだけに生徒に求められる学習量も相応のボリュームです。
SAPIXはあえて自習室を設けていません。授業後は自宅で勉強するスタイルが基本なので、家庭学習が定着化していない子供にとっては厳しいでしょう。
親の負担が大きい
先ほど述べたとおり、SAPIXには自習室がなく、家庭学習で回していかなければなりません。他塾のように自習室で居残り勉強をしながら、先生に質問に行くことができないのです。また、配布物が多く整理整頓だけでもひと苦労。そのため、「親の負担が大きい」と感じ、やめるケースもよく聞きます。
競争意識についていけない
中学受験塾の多くがそうであるように、SAPIXでも、子供の現在の成績がどのぐらいかが可視化されてしまいます。クラス分けや席順で、塾内の成績において誰が優秀で誰がそうでないかが一目瞭然です。こうしたやり方は、子供たちの競争心に火をつけるためのもので、負けず嫌いの子供には合います。しかし、逆効果になって、委縮してしまう子供も珍しくありません。
生活リズムについていけない
のちほど詳しく紹介しますが、サピックスの授業が終わる時間は遅めです。そのため、夕食のタイミングをはじめ、変わってしまった生活リズムに対応しきれない家庭が出てきます。
遅くまで授業があって大変! 学年別時間割
中学受験塾に通うと、どうしても帰りが遅くなり、生活リズムが崩れがちです。以下学年ごとの時間割を紹介します。
SAPIX新四年生(首都圏)の時間割
首都圏の新四年生は週二回で三コマをこなさなければなりません。授業は、17時開始・20時終了です。
この終了時間の遅さに小学四年生から慣れなければなりません。夕飯が21時頃になる家庭も少なくないでしょう。そうなると、生活リズムが崩れ、親子ともにストレスが溜まってしまうケースも少なくありません。
SAPIX新四年生(関西圏)の時間割
関西圏は、場合によっては首都圏より更にスケジュールがハードです。新四年生は週二回~週三回塾に通います。
たとえば、17時15分に一コマ目が開始すれば3コマ目が終わるのは20時15分ですし、授業後20時20分から社会をとっていれば21時20分までかかります。関西圏は首都圏以上に夕飯が遅くなります。
SAPIX新五年生(首都圏)の時間割
首都圏は五年生から週当たりの授業回数が一回増えて、週三回になります。これは四年生から五年生に上がったことで、カリキュラムが1.5倍になったことを意味します。
三回の授業に間に合うよう宿題をやり、復習をやらなければならないため、効率的に勉強できるようになっていないと置いていかれてしまいます。
SAPIX新五年生(関西圏)の時間割
関西圏は週2回が基本で、社会と算数αの希望者のみ週3回になります。関西圏は一日3コマなので終わる時間がなんと21:15です。塾のある日は授業前に簡単に食事を済ませておかないと厳しいでしょう。生活リズムをうまく回せるかどうかがカギになります。
SAPIX新六年生(首都圏)の時間割
新六年生は17時から21時までびっしりと授業が詰まっています。志望校別特訓時間割も4コマ連続なので、集中力が求められるでしょう。これだけ密なカリキュラムをこなすということは、宿題や復習の量もすさまじいということです。覚悟をして臨む必要があります。
ただし、SAPIXの教材は中学受験業界トップだけあって、クオリティが高く、きっちりとこなせばグンと成績は伸びます。
SAPIX新六年生(関西圏)の時間割
関西圏は首都圏より開始時間が遅い分、さらに終了時間が遅めです。首都圏同様、これだけ詰まった内容をどうこなすかが問われます。授業を受けるだけで成績が上手く上がる子供は少数なので、家庭学習をどれだけ軌道に乗せるかが問われます。これだけ詰まっているからといって、塾だけでいっぱいいっぱいでは難しいのが実情です。
SAPIXについていけない場合の3つの選択! 学習の見直し・教育サービスの併用・転塾
SAPIXについていけない子供には3つの選択肢があります。以下見ていきましょう。
学習方法を見直そう
子供は机に向かっている時間分、勉強できているわけではありません。親からすると歯がゆいことに、たいていの子供は集中するまでにかかる時間が長く、実際に集中している時間はといえばあまり長くないのです。
効果的に勉強するためには、とっかかりを早くしなければなりません。その上で、なるべく長い時間、集中した状態で机に向かってもらう必要があります。そのためには学習に対するモチベーションアップも不可欠です。
対処法としては
☆勉強する環境を変える
☆リストを作り、やるべき内容を可視化する
☆ショートステップ方式で進める
などが挙げられます。
勉強する環境を変える
机の周りに、すぐ手を伸ばしたくなるおもちゃや漫画は置いてありませんか。子供は、勉強を中断してすぐにほかのことをやろうとします。気が散るものが手に届く環境にないかをチェックしましょう。
リストを作り、やるべき内容を可視化する
「なんとなくやれる分だけ勉強する」では、到底SAPIXのカリキュラムをこなすことはできません。その日なにをやるかをリストアップして、可視化しましょう。
ショートステップ方式で進める
やる気がなかなか出ない子供はショートステップ方式で進めるとよいです。目標を細かく立てて、達成できたら「今日は〇〇と△△ができたね」と伝えます。膨大なカリキュラムと向き合わなければなりませんから、「自分はなにもできていない」と落ち込む子供は多いです。「やればできるんだ」という姿勢に持っていきましょう。
教育サービスの併用
大手中学受験に特化した補習コースを設けている個別指導塾や家庭教師派遣センターはたくさんあります。
たとえば以下の家庭教師サービスもそうです。
今は、対面だけではなくオンラインサービスも増えていますし、自分に合ったスタイルでフォローをお願いするとよいでしょう。
集団授業塾でも個別指導コースを別途設けているところは少なくありません。ついていけなかった子供が、改めて集団授業に追いつけるように、個別指導を併用させるやり方です。
通っている塾に個別指導コースがあれば、そちらを利用すると集団授業との連携がとりやすくてよいですし、そうでなければ家庭教師を選択するのもよいでしょう。
こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
【中学受験】塾と家庭教師の併用あるいは家庭教師だけで臨む受験って? - ノビコトwww.nobikoto.com
わが子が塾自体に難色を示しているようであれば、通信教育に切り替えて様子を見るのも手でしょう。勤めていた塾に入塾してきた子供は、「これまでZ会をやっていました」と言うケースが圧倒的に多かったです。実際、Z会をきっちりやり込んでいる子供は、塾の学習についていくのもスムーズでした。
転塾をする
SAPIX以外の塾に転塾するのもよい手です。ただし、転塾はカリキュラムやテキストがガラリと変わるため、場合によっては履修した内容の重複などでタイムロスが発生します。
SAPIXから転塾ということであれば、SAPIXにカリキュラムがよく似ているグノーブルだと比較的スムーズかもしれません。グノーブルは、SAPIXの主要メンバーが立ち上げた塾として知られています。
【サピックス・グノーブル】評判は?御三家対策におすすめの塾選び - ノビコト
大手で、ということであれば、早稲田アカデミー・四谷大塚・日能研を検討してみてはどうでしょうか。
地域によっては浜学園もおすすめです。
転塾については、以下の記事を参考にしてください。
中学受験において転塾が成功するタイミング!塾選びのコツは? - ノビコト
受験校レベルに合わせた塾選びについては、以下の記事がおすすめです。
【元塾講師】中学受験塾選び!御三家・難関校・中堅校狙い各おすすめ - ノビコトwww.nobikoto.com
大手塾の入塾テストについてです。なお、大手中学受験塾における難関校の合格率は
SAPIX>早稲田アカデミー>四谷大塚>日能研の順です。
早稲田アカデミーの入塾テストの対策法。難しいって本当?過去問は? - ノビコト
【四谷大塚入塾テスト対策】難易度や合格点は?落ちた場合も - ノビコト
日能研の入塾テスト(入室資格テスト)って難しい?合格率は? - ノビコト
SAPIXが合わない場合は子供の状況に合わせた対処を
難関校合格率において、SAPIXは間違いなくトップに立つ塾です。優れた授業と出題傾向をおさえた教材で、中学受験塾業界をリードしています。
しかし、優れた塾が必ずしもわが子に合うわけではありません。他の教育サービスを併用することで実力を発揮する子供もいますし、転塾して成績がグンと上がる子供もいます。
判断する上で大切なのは、子供の状況を把握してあげることです。まずは保護者が、子供が授業を理解できているか、家庭でやるべき学習をきちんとこなせているかをチェックしてあげてください。その上で、ベストな選択肢を探ってみましょう。
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